建設業許可を取得するためには、技術者や財産的基礎などの要件だけでなく、建設業の経営を適正に行うことができる経営体制を備えている必要があります。
その中心となるのが、**「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」**です。
法人の場合は常勤の役員等、個人事業の場合は本人または支配人のうち、一定の経営経験を有する者を置くことが基本となります。
また、一定の条件を満たせば、1人の役員だけで要件を満たすのではなく、**「常勤役員等+補佐人」**という複数人の体制によって要件を満たす方法もあります。千葉県の令和8年4月版の手引でも、この2つの方法が示されています。
1.常勤役員等とは?
「常勤役員等」とは、法人の場合は常勤の役員のうち1人、個人事業の場合は事業主本人または支配人をいいます。
さらに、その人について一定期間以上、建設業の経営業務を管理してきた経験などが必要となります。
千葉県では、主たる営業所に常勤役員等を置くことが必要とされ、「常勤役員等+補佐人」の体制を利用する場合には、その補佐人についても主たる営業所に置くことが求められています。
「常勤」であることにも注意が必要です
常勤役員等は、名前だけ役員になっていればよいわけではありません。
申請会社の主たる営業所で、原則として通常の勤務時間中に職務に従事できる状態であることが必要です。
そのため、例えば他社の代表取締役や清算人などは、常勤性の観点から原則として常勤役員等にはなれません。
ただし、千葉県の現在の取扱いでは、他社に複数の代表取締役が存在し、申請会社での常勤性に問題がない場合などは例外となることがあります。
また、管理建築士や宅地建物取引業における専任の宅地建物取引士など、他の法令によって常勤・専任が求められる職務との兼務についても注意が必要です。
2.1人の常勤役員等で要件を満たす場合
最も一般的なのは、常勤役員等となる人自身の過去の経験によって要件を満たす方法です。
次のいずれかに該当する必要があります。
① 建設業について5年以上の経営経験がある
建設業に関し、5年以上「経営業務の管理責任者」としての経験を有している場合です。
例えば、
• 株式会社の取締役
• 合同会社等の業務執行社員
• 個人事業主
• 支配人
• 支店長・営業所長など一定の権限を持つ者
などとして、建設業の経営を総合的に管理していた経験が該当します。
② 経営者に準ずる立場で5年以上経営業務を管理していた
建設業について、経営業務の管理責任者に準ずる地位にあり、経営業務を執行する権限を委任されて、5年以上経営業務を管理した経験がある場合です。
役員そのものでなくても、具体的な権限を与えられ、実質的に建設業の経営を担当していた場合には、この要件を利用できる可能性があります。
③ 経営者を補佐した経験が6年以上ある
建設業について、経営業務の管理責任者に準ずる地位で、6年以上、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験がある場合です。
この3つの要件は、千葉県の令和8年4月版の手引でも現在の要件として掲げられています。
3.役員経験が5年なくても許可を取得できる場合があります
「取締役として5年以上の経験がないから、建設業許可は取れない」とは限りません。
現在の制度では、一定の経験を持つ常勤役員等に、財務管理・労務管理・業務運営について経験を有する者を配置する**「常勤役員等+補佐人」**という方法があります。
令和2年10月の制度改正によって導入された仕組みです。
4.「常勤役員等+補佐人」で要件を満たす場合
この方法では、まず常勤役員等となる人が、次のいずれかに該当する必要があります。
パターン1
建設業に関して、
2年以上の役員等としての経験
があり、さらに、
役員等または役員等に次ぐ職制上の地位としての経験が通算5年以上
ある場合です。
役員等に次ぐ職制上の地位については、財務管理・労務管理・業務運営のいずれかを担当していたことが必要となります。
パターン2
役員等としての経験が通算5年以上あり、そのうち、
建設業に関する役員等としての経験が2年以上
ある場合です。
つまり、一定の条件のもとでは、建設業以外の会社での役員経験を含めて判断できる場合があります。国土交通省の現行の手引でも、この2つの類型が示されています。
5.補佐人にはどのような経験が必要?
「常勤役員等+補佐人」の制度を利用する場合、常勤役員等を直接補佐する者を置く必要があります。
補佐人には、許可を受けようとする建設業者等において、次の3つの業務についてそれぞれ5年以上の経験が必要です。
• 財務管理
• 労務管理
• 業務運営
1人が複数の経験を兼ねることもできるため、必ずしも3人の補佐人を置く必要はありません。
財務管理
建設工事を施工するための資金調達、施工中の資金繰り、下請業者への支払いなどに関する業務です。
労務管理
従業員や工事現場の勤怠管理、社会保険関係の手続などに関する業務です。
業務運営
会社の経営方針や運営方針の策定・実施などに関する業務です。
6.経験年数だけでなく「証明できるか」が重要です
建設業許可で特に注意したいのが、
「経験があること」と「その経験を許可行政庁に証明できること」は別
という点です。
例えば、
「以前の会社で10年間建設業に携わっていた」
というだけで、自動的に10年間の経営経験として認められるわけではありません。
実際には、
• その会社が建設業を営んでいたこと
• 本人がその会社に在籍していたこと
• どのような役職・地位にあったか
• その地位にあった期間
• 必要な権限を持っていたか
などを、客観的な資料によって確認します。
千葉県の令和8年4月版の手引では、常勤役員等・補佐人の経営経験の確認資料と常勤性の確認資料がそれぞれ定められています。
特に「経営業務の管理責任者を補佐した経験」を利用するケースでは、組織図、業務分掌規程、稟議書、人事発令書など、実際の地位や業務内容、経験期間を確認する資料が重要になります。千葉県は、この類型について事前に相談して認定の可否を確認することを推奨しています。
7.常勤性を証明する資料にも注意
許可申請では、過去の経営経験だけでなく、現在その人が申請会社に常勤していることの確認も必要となります。
千葉県の令和8年4月版では、健康保険被保険者証の新規発行廃止に伴い、常勤性の確認資料についても見直しが行われています。
そのため、以前の申請で使用した資料をそのまま準備するのではなく、申請時点の最新の手引を確認することが重要です。
8.社会保険への適切な加入も許可要件です
建設業許可では、常勤役員等の要件を満たすだけでは足りません。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、加入義務がある場合には、適切に加入していることも「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足る能力」の要件となっています。
9.常勤役員等と営業所技術者等は兼任できる?
同じ会社・同じ営業所であれば、要件を満たす人が、
「常勤役員等」と「営業所技術者等」を1人で兼ねることができます。
千葉県の現在の手引でも、同一営業所内であれば両者を1人で兼ねることができるとされています。
これは小規模な建設会社や新規に建設業許可を取得する事業者にとって、実務上重要なポイントです。
10.常勤役員等の要件で特に注意したいケース
次のようなケースでは、申請前に十分な確認をおすすめします。
• 取締役としての経験が5年未満
• 過去の勤務先での役員経験を利用したい
• 廃業した会社での経験を利用したい
• 個人事業主時代の経験と法人役員の経験を合算したい
• 執行役員・部長等の経験を利用したい
• 経営業務を補佐した経験を利用したい
• 建設業以外の会社での役員経験を利用したい
• 常勤役員等と営業所技術者等を兼任したい
• 他社の役員等を兼任している
• 「常勤役員等+補佐人」の制度を利用したい
特に、準ずる地位や補佐経験を利用する申請では、単純な役員経験による申請よりも確認資料が多くなります。
まとめ
建設業許可の経営体制に関する要件は、大きく分けると、
① 1人の常勤役員等の経験で要件を満たす方法
と、
② 常勤役員等と補佐人による組織体制で要件を満たす方法
があります。
一般的なのは、建設業について5年以上の経営経験を持つ役員等を置く方法ですが、役員経験が不足している場合でも、過去の役職や経歴、社内の補佐体制によっては許可要件を満たせる可能性があります。
重要なのは、単に「何年間働いていたか」だけではなく、その期間にどのような地位で、どのような業務を行い、それをどの資料で証明できるかです。
建設業許可を検討している段階で経歴と証明資料を確認しておけば、申請直前になって「経験を証明できない」という事態を防ぎやすくなります。
建設業許可のご相談
「自社の役員で常勤役員等の要件を満たせるかわからない」
「以前勤めていた建設会社での経験を利用したい」
「役員経験が5年ないが、許可を取得する方法があるか知りたい」
「どの資料を用意すれば経営経験を証明できるのかわからない」
といった場合には、申請前に経歴や会社の体制を整理して確認することが重要です。
当事務所では、建設業許可の申請だけでなく、常勤役員等の要件確認や必要な証明資料の検討からサポートいたします。
まずはお気軽にご相談ください。